第二章 親鸞の獲信における二度生まれの考察
はじめに
第一章で見てきたようにウィリアム・ジェイムズは、罪の意識に苦しむ者が廻心体験を経て生まれ変わる現象を、「二度生まれ」という言葉を使って説明している。浄土真宗における獲信も、未来永劫に迷っていく業を背負っている凡夫が、阿弥陀仏から他力信心を頂く事で、極楽浄土に往生することを疑い無く信ずる身となる。これを「二度生まれ」と同様の構造を持つものと捉えた上で、獲信について検討したい。
本論文で中心となる伊藤の布教目的は、自力と他力の廃立を説き、求道者を獲信に導く事であった。故に、本章においては獲信の内実を把握し、伊藤の活動を考察していく上での要点を得る事を目的とする。
まず第一節では、聖教の文および先達の理解から、獲信の定義を確認する。第二節では、獲信の過程を表していると考えられる三願転入について、その特徴を点検するとともに、先哲がどのように三願転入を捉えていたかを見ていきたい。そして第三節において、親鸞教義における獲信の過程を説明した部分を分析する。